渡米生活10年以上、アメリカの音楽シーンで高く評価されている松居の新作。これまでのリズム重視路線を変更、どの曲もユニークで美しく優雅なメロディをもち、ハーモニー的にも奥行きを増した感がある。上質のNACをお求めの方にオススメの1枚だ。「CDジャーナル」

amazon : Dream Walk (1996)

Google Play Music : Keiko Matsui : Dream Walk (1996) : ドリーム・ウォーク

アメリカ、とりわけ西海岸で圧倒的な知名度を誇るキーボード奏者、松居慶子の最新作。アメリカで先行発売され、すでにビルボードのコンテンポラリー・ジャズ・チャートで5位というからすごい。むろん、こうした成果は、彼女がアメリカでの活動をメインにしてきたからだが、その人気の秘密は何よりもこの音に記されている。端的に言って、日本のフュージョンの音ではなく、やはり西海岸の音なのだ。くすんだ色などほとんどなく、乾いた空気の中にぴったりはまる音で、情感も含めて隅々まで端正に組み立てられ、スッと耳に入り身体を快適にマッサージする、そんな言い方をしたらいいだろうか。冒頭のタイトル曲は、どこか中島みゆきのメロディを思い出させるが、そんなエキゾチズムもそこかしこにあり、むしろ、そうした明るい無国籍性みたいなのも、アメリカならではと思う。しかし、これを楽しめるか楽しめないかの差は、実はほんのちょっとの感覚の差異でしかないとぼくは思っている。 (青木和富) — 1997年02月号 「CDジャーナル」